流行時期:以前は冬から春にかけて多かったが、最近は不定。
原因:
水痘・帯状疱疹ウイルスがヒトからヒトへ伝播して初感染で発症する。おもに飛沫感染。
症状:
発熱(37-38℃)と共に強いそう痒感(かゆみ)を伴う発疹が出現する。発疹は紅斑、丘疹、水疱、膿疱、痂皮と数日で進展していく。次々に新しい発疹が発生するので、前述の発疹がさまざまに混在し、頭の有髪部や口腔粘膜にも出現するのが特徴である。また、女児では陰部にも水疱ができ排尿時などに痛みを訴えることが多い。発疹の数と発熱の程度は比例する。通常は1週間で治癒するが、思春期以降の年長児や成人の初感染では発熱などの全身症状が強く現れることが多い。
[1]:妊婦が妊娠初期に感染した場合、約5%に先天性水痘症候群(四肢低形成、皮膚瘢痕、小頭症など)を認める。出産4日前から出産2日後に水痘に発症した場合、すなわち新生児の発症が生後5〜10日目の場合、母体の水痘に体する抗体が十分産生される前に生まれるため、母体から抗体をもらえず、新生児の水痘は重症化する。
[2]:悪性腫瘍やステロイドホルモン療法中など免疫不全状態にある小児が水痘にかかると、出血性進行性水痘、水痘肺炎,脳炎などの合併を伴う重篤な病態を呈する危険がある。
[3]:水疱のかき傷に二次性細菌感染をおこして膿痂疹(とびひ)、蜂窩織炎(深部組織まで化膿する)を起こすことがある。
[4]:水痘脳炎、髄膜炎の発生頻度は1:1,000〜5,000人。
潜伏期間:2週間
好発年齢:乳幼児、学童前半期。
特徴:
水痘は初感染の病像で、ウイルスは死なず、脊髄後根神経節潜伏感染する。後に再活性化し、帯状疱疹として発症する。
保育所と学校の管理:水疱がすべて痂皮化する(かさぶたになる)まで約1週間、隔離する。
治療:
健康小児の軽症水痘は特に治療を要しない。水痘疹の消毒と、かゆみ止めとして局所に石炭酸亜鉛華リニメント(カチリ)を1日数回塗布する。細菌感染がある場合、抗生物質軟膏塗布や内服を行う。重症例に対しては抗ウイルス薬を用いた特異的治療を行う。食欲不振などで経口摂取困難な場合は経静脈輸液や栄養補給などを加えた全身管理を行う。眼瞼部の水痘疹と結膜の発赤がある時には角膜炎も合併することがあるので、抗ウイルス薬軟膏の塗布や眼科医の診察が必要である。
予防:
最近の水痘は以前よりも重症例が多く、発熱期間も長いように見受けられる。また、水痘脳炎は日本で年間40〜50人発生していると推定され、決して無視できる数ではない。したがって予防するのが最善の方法である。
[1]:水痘生ワクチン
有効率70〜80%で、感染72時間以内までに行う。後述の帯状疱疹の発生頻度を下げられると言われている。
昨年より2回接種(3〜6ヵ月の間隔)となり激減したが、時折発症が見られる。
[2]:アシクロビルの内服
水痘生ワクチンの接種を逸した場合、すなわち感染後8日目より7日間アシクロビルを内服すると高率に発症を予防できる。しかし、再度の感染機会にまで有効かどうかの疑問は残る。
[3]:水痘高力価ガンマグロブリン
一般的ではない。
小児では比較的まれであったが、最近健康小児にも増加の傾向がある。高齢者ほど発症率が高い。癌や白血病などの悪性疾患、骨髄移植後などで免疫抑制剤を投与中の患児に多い。
初感染で水痘に感染した後、ウイルスが知覚神経に生き残って潜伏し、再活性化して帯状疱疹が発症する。一定の神経支配領域に一致して密に集まり多発する小水疱と神経痛とを特徴とする。通常は該当の神経支配領域に一致して神経痛を自覚するが、この初発症状の痛みの出現した時点では、水疱が認められないことが多い。その2-3日後に同部位に紅斑が生じ、さらにこの上に小水疱が密に集まり出現してくる。水疱が乾燥し、痂皮をつくるまでには2〜4週間を要する。痛みには個人差があるが、一般に高齢者ほど痛みが強い傾向がある。左右どちらかの半身に出現する。耳介周囲に帯状疱疹を認める場合は、顔面神経麻痺を起こすことがある(ラムセイ・ハント症候群)。高齢者では帯状疱疹後神経痛が後遺症として残ることがある.