皮膚にある斑点を俗に「あざ」といいます。ほとんどの人にあるあざは皮膚の限局性の奇形で、表皮、色素細胞、脂腺、アポクリン腺、エクリン腺、毛包、血管、リンパ管、神経線維、皮下組織などに先天性の素質により種々のあざが生じます。あざは色調や表面の性状から次のように分類されます。
また、あざに一致するような病変が皮膚だけではなく、神経や内臓、運動器官などに同時に生じて一つのまとまった病像を呈するものは母斑症と呼ばれ、注意が必要です。
下のテーブルの中の病名は説明とリンクしています。説明部分の黒字は心配の無いもの、赤字やピンク字は要注意で早めに診察を受けた方がよいあざです。
俗称 | 皮膚に限局するもの | 母斑症(皮膚以外にも同じ病変が存在するもの) |
赤あざ | 単純性血管腫 正中部母斑 a) サーモンパッチ b) ウンナ母斑 イチゴ状血管腫 海綿状血管腫 若年性黒色腫 |
スタージ・ウェーバー症候 クリッペル・ウェーバー症候 カサバック・メリット症候 青色ゴム乳首様母斑症候群 |
黒あざ | 母斑細胞母斑 a) 黒子(ほくろ) b) 中等大母斑細胞母斑 c) 巨大母斑細胞母斑 黒色表皮腫 |
神経皮膚黒色症 汎発性黒子症候群(LEOPARD黒子症候群) ポイツ・イェーガース症候群 クロンクハイト・カナダ症候群 |
青あざ | 蒙古斑 青色母斑 大田母斑 |
色素血管母斑症2型 |
|
そばかす(雀卵斑) 扁平母斑 ベッカー母斑(遅発性扁平母斑) 色素性じんま疹 |
フォン・レックリングハウゼン病(神経線維腫症) マッキューン・アルブライト症候群 色素失調症(ブロック・ザルツバーガー症候群) |
|
尋常性白斑 癜風 サットン白斑 まだら症(部分的白皮症) |
結節性硬化症(木葉状白斑) |
|
軟骨母斑(副耳) 皮膚線維腫 表皮母斑 脂腺母斑 表在性脂肪腫性母斑 若年性黄色肉芽腫 |
表皮母斑症候群 結節性硬化症(血管線維腫) |
口内病変 | 粘液嚢腫 |
1. 単純性血管腫、あるいはポートワイン母斑 |
a) サーモンパッチ 頻度:新生児の約30%に生まれつき認められる。 部位:両側上まぶたの内側、眉間から前額中央に見られる。濃淡のムラは少ない。 経過:上まぶたのサーモンパッチは1才半までにほぼ全例が消失。眉間から前額中央のサーモンパッチは成人でも稀に残る。 |
4. 海綿状血管腫
性状:生まれつき身体のどの部位にでも生ずる大小さまざまで、皮膚表面から触れる淡紫赤色の軟らかいコブ。平坦なもの、軽度に隆起するものなど種々。
原因:真皮深層から皮下組織、ときには深部筋肉層にまで成熟した奇形性血管がつる状に増殖して、ヘビがとぐろを巻いた様な血管の塊ができる。
経過:成長とともに多少増大傾向がある。舌に生じた時には巨大舌となる。
治療:放射線療法は無効。形成外科的切除を行う。
海綿状血管腫に関連する母斑症
青色ゴム乳首様母斑症候群
皮膚と消化管に海綿状血管腫が多発し、消化管出血のため貧血をきたす。
頻度:少ない。
性状:皮膚の血管腫は青色で弾力性に富むゴム乳首様で押さえると痛みあり。自然消退傾向なし。
消化管以外にも肝、肺、脳、腎、胆嚢、骨格筋などにも血管腫が生ずることがある。
治療:出血している消化管血管腫の切除、貧血に対する治療。
5. 若年性黒色腫(スピッツ母斑)
次項の母斑細胞母斑の特殊型で良性
頻度:小児に特有で多い。
性状:3~13才の小児の顔面に通常は単発する淡紅色~淡紅褐色の半球状腫瘍。血流が多いため赤色に見え、傷つき出血しやすい。表面は平滑で光沢を有し、色素沈着を伴うこともある。直径1cm位まで比較的急速に増大するが、自覚症状なし。
治療:切除する。 (ページ初めへ戻る)
1. 母斑細胞母斑
神経系の細胞は胎児期に神経細胞か色素細胞(メラノサイト)に分化するが、いずれにも分化しきれなかった細胞が母斑細胞である。表皮内から真皮深層に母斑細胞が増殖した状態を母斑細胞母斑という。成人日本人は平均9個の母斑がある。大きな母斑は先天性であることが多く、皮膚ガンの一種の悪性黒色腫の発生母地となり得る。日本では悪性黒色腫は足底、爪甲、手掌に多いため、同部位の母斑細胞母斑には注意が必要。
次の3型に分類される。
a. 黒子(ほくろ)
非常に多い。褐色から黒褐色、エンドウマメ大までの大きさ。平滑で皮膚と同高のもの、半球形に隆起するものもある。出生時には認められず、3~4才ごろから発生し、次第に増加してある年令で頂点に達し、その後は減少する。
2. 黒色表皮腫 |
1)神経皮膚黒色症 巨大母斑細胞母斑と脳脊髄の色素細胞の異常増殖を主症状とした進行性の母斑症。母斑の悪性化率は高い。頭痛、嘔吐、運動障害、けいれん、意識混濁などの神経症状が出現する。上半身に母斑細胞母斑が広範囲にあるものでは注意が必要。幸い非常に稀。 |
|
2)汎発性黒子症候群(LEOPARD黒子症候群) 全身に多発する小さな黒子と心電図異常、両眼開離、肺動脈狭窄、性器異常、発育障害、難聴を伴う遺伝性の疾患。稀。 |
|
3)ポイツ・イェーガース症候群 口唇、口腔粘膜、手のひら、足のうらに多発する小色素斑と多発性の消化管ポリープを特徴とする遺伝性の母斑症。 頻度:日本に300人以上。 性状:口唇、口腔粘膜、手のひら、足のうらに米粒大まの大きさの黒褐色の小色素斑が1~2才ごろから出現する。これに遅れて胃、小腸、大腸に消化管ポリープが多発し、腸重積(47%)、腹痛、血便、ポリープの肛門外脱出などの症状が現れる。 原因:表皮基底細胞層のメラニン色素の沈着。 経過:色素斑はほとんど変化しないが、消化管ポリープの10%は悪性化する。 治療:口唇色素斑には削皮術を、消化管ポリープは内視鏡にて摘出する。 |
1. 蒙古斑 |
|
2. 青色母斑 |
3. 大田母斑
顔面片側上部の眼を中心とする褐青色色素斑。
頻度:1万人に1人。女性は男性の5倍多い。
性状:多くは生まれつき又は生後まもなく、あるいは思春期に通常顔面片側に上下眼瞼、前額部、上顎部、鼻翼、口腔粘膜にかけて淡青色の色素斑が出現し、その上に小さな褐色斑が分布する。2/3に眼球結膜にも色素斑ができるので青く見える。
原因:メラニン色素に富む大田母斑細胞が表皮下層、真皮内に粗く分布する。
経過:自然治癒はないが、おおむね良性。
治療:ドライアイス療法、レーザー療法。
青あざに関連する母斑症
色素血管母斑症2型
単純性血管腫と蒙古斑様青色斑とが別々にあるいは重なり合って広く皮膚面を覆い、スタージ・ウェーバー症候やクリッペル・ウェーバー症候を高率に合併する。稀な病気。
(ページ初めへ戻る)
1. そばかす(雀卵斑)
性状:顔面、頚部、腕、手背など露出皮膚部位に多発する淡褐色~黒褐色の小色素斑で、群生して対称性に分布する。太陽光線、熱により色調は増強され、冬季は薄く、夏季に濃くなる。赤毛を合併することが多い。
大きさ:米粒大まで。
経過:5才以上の小児に発症し、思春期に著明となり、中年以降に軽快する。
原因:表皮基底層の色素細胞の機能亢進によるメラニン色素の増加。
2. 扁平母斑
頻度:10%
性状:出生時すでに、あるいは出生後早い時期に出現する境界明瞭、淡褐色ないし褐色の偏平で隆起しない茶色の一様の斑点。面上に色の濃い小色素斑が散在することがある。形状はさまざま。腹部では片側性に出現することが多い。。数は多くとも3~4個。手掌、足底以外のどの部分にも発生し得る。
大きさ:直径数mmから半肢に及ぶ巨大なものまである。
経過:自然治癒はない。母斑細胞母斑と異なり、悪性黒色腫は生じない。
直径1.5cm以上の斑が6個以上認められればレックリングハウゼン病(後述)の可能性あり。
原因:表皮基底層のメラニン色素の増加による。
治療:特に必要はないが、削皮術、レーザー療法、凍結療法、遮蔽クリームなどがある。再発しやすい。
3. ベッカー母斑(遅発性扁平母斑) 思春期前後の男子の前胸部、肩、上背、上腕に片側性に生ずる、有毛性の大型の扁平母斑。母斑の出現初期には有毛性ではなくとも後に発毛してくる。治療に良く反応し、再発することは少ない。 |
|
4. 色素性じんま疹(肥満細胞症) 肥満細胞が増殖する病気のうち皮膚に限局するものを色素性じんま疹、皮膚のみならずリンパ節、骨、肝臓、脾臓、消化管などを侵すものを全身性肥満細胞症と云う。小児には色素性じんま疹が大部分であるので、ここでは色素性じんま疹を説明する。 頻度:300~2500人に1人。 性状:生下時~6か月までに発生することが多い。はじめは全身に虫刺され様の紅色丘疹(つぶつぶ)を生じ、やがて直径5cm位までの類円形の褐色斑に変ずる。シコリを伴うこともある。痒みが強く、擦るとじんま疹のように膨れ上がり周囲が赤くなる(ダリエ徴候)。 経過:ふつう10~15才までに自然消退する。 原因:肥満細胞の放出するヒスタミン、ヘパリン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの薬理作用による。 治療:抗ヒスタミン剤、ステロイド、紫外線療法、ドライアイスや液体窒素療法など。 |
茶あざに関連する母斑症
1)フォン・レックリングハウゼン病(神経線維腫症)
褐色色素斑と神経線維の腫瘍が多発する神経由来の母斑症。
頻度:3000人に1人でかなり多い。
症状:
a) 皮膚症状:大小の褐色色素斑が乳幼児期から全身に出現する。ミルクコーヒーの色に似ていることからカフェ・オ・レ斑と呼ばれる。小褐色斑はそばかす様だが、そばかすは乳幼児期には存在せず、5才以降に出現することで区別できる。大褐色斑は指爪大以上の扁平母斑様で、直径1.5cm以上の大褐色斑が6個以上あれば本症が疑わしい。10才以降に全身皮膚に正常色~淡紅色で、鶏卵大までの大小不同の皮膚腫瘍(神経線維腫)が出現し、少しずつ増数、増大する。神経線維腫は皮膚表面に近い所に生ずることが多いが、神経の存在する所ならどこにでも生ずる。
b) 骨病変:脊椎側彎、脊椎後彎、下肢彎曲など。
c) 神経病変:聴神経腫瘍による聴力障害、平衡障害、脳腫瘍、けいれん、知能低下。
d) 眼病変:虹彩小結節、視力障害。
e) 内臓病変:褐色細胞腫など。
経過:中枢神経の症状が悪化したり、2~3%の頻度で腫瘍が悪性化することがある。
原因:明らかではない。遺伝はあるが、70%は突然変異。
治療:根本的な治療はない。
2)マッキューン・アルブライト症候群 症状: a) 生下時あるいは生後数か月に片側に発生する傾向がある種々の大きさのカフェ・オ・レ斑様の皮膚の色素斑。 b) 手足の骨に多い線維性骨形成異常(骨折、骨痛、骨変形)。 c) 女性における性的早熟を伴う内分泌異常。 を3症状とする症候群。 頻度:わが国で100人以上。 原因:細胞内の生化学反応に関与するG蛋白の異常による。 |
|
3)色素失調症(ブロック・ザルツバーガー症候群) 女児に新生児期に特有の水疱と丘疹、色素沈着を生じ、皮膚症状はやがて消退するが合併症を残す病気。稀。 皮膚症状: 第1期(水疱期): 生下時~生後1週間以内に線状に配列する紅斑と小水疱が出現。約2か月間で消退する。 第2期(丘疹・イボ状期期): 水疱の消退とともにイボ状の暗紅色発疹が出現、数か月間持続する。 第3期(色素沈着期): イボ状の発疹部に一致して渦巻き状、飛沫状の褐色ないし灰褐色の色素斑が5~6才まで残存。 第4期(色素沈着消退期): 色素沈着はゆっくり薄くなり、学童期ごろまでに消退する。 合併症: 30%程度に知能発育異常、けいれん、小頭症、先天性股関節脱臼、歯牙欠損、斜視、白内障などを認める。 |
|
皮膚の色調が正常よりも白くなったもので、脱色素斑と呼ばれる。
1. 尋常性白斑
後天性の脱色素斑をきたす疾患で俗に白なまずと呼ばれる。
頻度:多い。大学病院皮膚科患者の1~2%。
原因:何らかの原因で色素細胞の破壊、減少、メラニン色素生成の停止が起こると推測されている。
性状:大小の類円形の白斑が身体各部に生ずる。白斑の特徴は乳白色の完全脱色素斑で、白斑部の毛は白毛となり、白斑に接する健常皮膚では色素増強を認める。1~数個の白斑が集まる場合、全身性に左右対称に生ずる場合、皮膚神経の走行に一致して片側性に生ずる場合とがあるが、小児では後者が多い。
治療:色素は毛嚢のある部位に再生しやすい。
a. 紫外線療法
b. ステロイド療法
c. 植皮術
2. 癜風
皮膚に常在するカビの一種マラセッチア・ファーファ(癜風菌)が表皮角質内で増殖して粃糠性落屑(角質が増殖して剥離し皮膚面にヌカ状に付着している状態)を伴う淡褐斑ないし脱色素斑を生ずる。
頻度:乳児には比較的少なく、15才以上に多い。
性状:
a. 生後2~6か月の乳児には顔面、頭部に脱色素斑を生じ、生後6か月以降に自然治癒する。
b. 年長児、成人には前胸部や上背部に好発する。毛孔に初発し、次第に融合して小豆大までの淡褐斑ないし脱色素斑を生じ、夏に増悪し冬に軽快する。脱色素斑は治癒後も白斑を残すことが多い。
治療:抗真菌剤の塗布。
3. サットン白斑 母斑細胞母斑(主に黒あざ)を中心として周辺に円形に拡大する白斑である。母斑細胞母斑の20~30%は老齢に達すると自然消失するが、小児や若年者では比較的早期にメラニンに対する自己免疫現象により母斑が崩壊し、消失過程をとることがある。この際母斑細胞母斑の周辺皮膚が色素脱出をきたす。中心の母斑を切除しないと白斑が拡大する傾向がある。30~50%尋常性白斑を合併する。悪性黒色腫でも類似の現象が起こることがあるので注意が必要。 |
|
4. まだら症(部分的白皮症) 胎生期に色素細胞の表皮への移行が一定部位において行われず、その部位に白斑または白毛が生ずる。 頻度:2万人に1人以下。 性状:前頭中央の白髪と前額中央の逆三角形の白斑が90%に認められる。白斑は他の部位にもほぼ左右対称にも現れ、白斑中にカフェ・オ・レ斑様の淡褐色斑が島状に混在する。 経過:多少縮小傾向はあるが、生涯不変。 治療:紫外線療法などがあるが、困難。 |
5. 結節性硬化症(木葉型白斑、後出)
尋常性白斑とは異なる不完全色素脱出斑が出生時または生後すぐに出現することが多い。直径1~3cmのナナカマドの葉状の白斑ないし小点状の白斑が新生児期からすでに認められ、けいれん発作や発育遅延があれば本症の疑いが強い。
(ページ初めへ戻る)
1. 軟骨母斑(副耳)
軟骨組織を含む小腫瘤で耳介近くのものが多く、副耳、または副耳珠と呼ばれる。胎生期の軟骨、皮膚の過形成による。
頻度:1.5%。
性状:多くは耳介と口角を結ぶ線上の耳の近くに片側性で単発する。頬部の場合は隆起せず臍状に陥凹したり、他の奇形(口蓋裂、下顎低形成)に伴うこともある。
治療:切除する。ときに軟骨組織が深くにまで伸びていることがある。
耳前瘻孔:日本人にかなり多く(3%)見られる耳介の前方の小孔で両側性のものも珍しくない。小孔より瘻管(導管)が外耳道に向け1~1.5cm位伸びて盲端に終わることが多いが、ときに耳輪軟骨を貫通して耳介裏側に小さな開口部を作ったり、中耳腔内に交通したり、顎にまで達するものもある。無症状なら放置するが、瘻管に細菌感染をおこすと悪臭のある分泌液を出したり、赤くなって腫れあがり、疼痛を訴えるようになる。感染を繰りかえすなら摘出する。
2. 皮膚線維腫
頻度:日常よく見られる。若年成人に多いが、子供にもときどき見られる。
性状:手足、とくに大腿の前側に好発する。直径5~20mmの皮膚面から軽く隆起し、赤褐色~黒褐色の硬い皮膚結節が単発、ときに多発する。痒み、叩打痛を訴えることもある。周囲の皮膚をつまむと腫瘍部は陥凹するのが特徴。
経過:良好、自然退縮もある。増大する傾向があれば隆起性皮膚線維肉腫(悪性)と区別する必要がある。
治療:希望により切除。
3. 表皮母斑 |
|
4. 脂腺母斑 表皮、毛のう、脂腺、汗腺(アポクリン腺、エクリン腺)の一部が腫瘍性に増殖したもの。脂腺の増殖を主体とし、表皮細胞やアポクリン腺の増殖をも伴うので類器官母斑とも呼ばれる。大部分は生まれつき存在するが、まれに小児期に生ずる。頭、顔面に単発性のことが多い。 頻度:大学病院で年間十数人。 症状: 第1期(小児期): 頭部では脱毛斑で、他の部位では薄い黄色でわずかに隆起している。 第2期(思春期): 黄色あるいは黄褐色のイボ状となる。痒みを伴うことあり。 第3期(思春期以降): 良性腫瘍を形成するが、10~20%悪性腫瘍(基底細胞ガン)となる。 治療: 思春期までに切除することが望ましい。 |
5. 表在性脂肪腫性母斑 真皮組織の大部分が脂肪組織に置換された状態となり、皮膚面に柔らかい淡黄色の半球形に隆起した大小結節が多数集まる。臀部、背面下方に片側性に生ずることが多い。出生時すでに存在することもあるが、多くは10才台に生ずる。 |
|
6. 若年性黄色肉芽腫 出生時から6か月以内に発生しはじめ、5、6才ごろまでに自然消失する黄色腫瘍。 頻度:少ない。 性状:主として顔面に好発する初めは橙黄色、徐々に黄色となる直径2cmまでの弾力性のある腫瘍で、75%は単発。高脂血症を伴わない。約20%に眼病変(虹彩、毛様体の混濁、前房内出血、緑内障)、骨、肺、消化器、睾丸などの病変を合併する。本症はフォン・レックリングハウゼン病のカフェ・オ・レ斑に合併することがある。 大きさ:直径数mmから半肢に及ぶ巨大なものまである。 経過:皮膚症状は自然治癒するため良好。 |
7. 結節性硬化症(血管線維腫)
頻度:1人/1万~15万人。
症状:てんかん、精神遅滞、顔面両頬の油性光沢のあるイボ様の母斑(血管線維腫)を3主徴とする不規則な遺伝性の母斑症で、てんかん発作は生後半年以内に初発することが多い。本症の70%以上に新生児期からすでに木葉型の色素脱出斑が認められるのが特徴的である。血管線維腫は4、5才から出現するが、顔面以外の皮膚にも結節状の腫瘍が発生する。頭部CTスキャンで脳室の石灰化が認められ、心臓、腎臓、肺にも病変が及ぶことがある。
(付2:脊柱の後ろに時々見られる皮膚洞ついて) 皮膚洞というのは,胎児のときの脊髄の名残が脊柱の上の皮膚に直径2mmくらいの小さな窪みが残ったものです(右写真)。 周りの皮膚はやや厚く、茶色くなったり、毛髪が生えていることもあります。大抵はこの窪みは数mm入った所で終っているので、ほとんどの場合は問題はありません。 ごくまれに後頭部にコブのように現れたり、脊髄神経まで続いていることがあり、脊髄液がもれたり、運動障害や排尿、排便障害などを起こすこともあります。 もし、窪みがジクジクしている、なかなか歩かない、などの場合は小児科に相談してみましょう。 脊髄神経まで続いているかどうかはMRI検査を受ければ分かります。 |
1.粘液嚢胞
口腔軟組織に発生する嚢胞の1つで,唾液腺の導管が外傷などにより損傷し,唾液が組織中に貯留して生ずる。
嚢胞(のうほう)とは病的に形成された液状成分を内容とする球状の嚢(袋のようなもの)である。唾液腺の存在するどの部位の粘膜にも発生するが,小児では咬傷を受けやすい下口唇に好発し、口底部,舌下部,頬粘膜にも生ずる。性状は半円形状の粘膜面から盛り上がった柔らかい腫瘤で,波動を触れ、疼痛はない。内容液は半透明な薄い桃白色の粘稠性である。咀嚼時に傷つきやすく自潰と再発を繰り返す。
口底部のものはガマ腫と呼ばれ,片側の口腔底に大きな腫脹を生じ,内容液が青く透見され,ガマのノド(喉頭嚢)に類似する。舌尖下面の前舌腺に異常が生じるものはブランダン・ヌーン嚢胞と呼ばれ、青赤色の小腫瘤として認められる。
治療は局所麻酔下で全摘出を行うが、壁が破れやすいので失敗することが多い。
最近ではレーザーを用いた摘出も行われている。
また、山形大学医学部などでOK432(商品名ピシバニール)の「嚢胞内注入療法」が試みられ、手術に代わりうる治療法として評価されている。
OK432は金沢大学医学部岡本肇名誉教授(故人)と共同研究者の越村三郎教授がA群溶血性連鎖球菌(溶蓮菌)から開発したガンに対する免疫治療剤であり、嚢胞内に強い炎症を起こし、嚢胞を壊死させて取り除く方法である。通常の外科手術では再発を繰り返す嚢胞を消滅させることができると云われる。