7. 食物性抗原


 食物がなぜアレルギーを起こすのでしょうか。そこのところをもう少し詳しく説明します。
 食物のなかでアレルギー反応を起こすのは蛋白質や、ペプシンやその他の消化酵素によって蛋白質が途中まで分解された状態で、まだいくつものアミノ酸が集まっているポリペプチドです。分子量が1万以上のポリペプチドや比較的分子量の小さい蛋白質は小腸粘膜の上皮細胞に取り込まれ、細胞内で分解された後に吸収されます。蛋白質は正常の状態でもごく少量がそのまま吸収されますが、アレルギーのない人の場合には正常な腸管の免疫機構が抗原を排除しますので問題になりません。また腸管粘膜上皮細胞からは分泌型IgAという腸管を防御する免疫グロブリンが分泌され、腸管内の異物を結合することにより、異物の侵入を阻止しています。
 しかしアトピー素因を持っている人や乳児では腸管粘膜上皮細胞内での分解が十分に行われなかったり、腸管粘膜の免疫機構が弱いため、ポリペプチドや蛋白質が腸管粘膜から粘膜下組織に侵入し、血液中に入りやすくなります。侵入した抗原は局所で1型から4型のすべてのアレルギー反応をおこし、炎症のため破壊された部位からは更に多量の抗原が侵入し、腸管局所以外でもアレルギー反応をもおこします。アトピー素因がある家系では、お母さんの食べたものが母乳を通じて赤ちゃんの体内に入り、アレルギー症状を起こすことがありますので、母乳といっても決して安心できません。この場合、原因となる食物抗原がはっきりすれば、お母さんにも食物制限が必要となります。ただし蛋白質は乳児にとって大事な栄養源ですので、食物制限は十分に検査をした上でないと行ってはいけません。
 また成長して腸の機能が強くなっていくと食物によるアレルギー症状は一部の人を残して、大部分が改善されますが、食物によるアレルギーが長引いたり、悪化するとダニなどの吸入性抗原によることが多い喘息が出現する可能性がありますので、注意が必要です。


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