6. アレルギーをおこす抗原の侵入


アレルギー反応をおこす抗原は侵入形式によって次の3種に分けられます

吸入性抗原・・・ほこり、ダニ、カビ、花粉、ペットの毛やふけなど

食物性抗原・・・卵、牛乳、大豆、ソバ、米、小麦、畜肉、魚肉、薬品類など

接触性抗原・・・うるし、装身具の金属、ラテックス、植物、化粧品など

 実際には上のようにはっきり分れるものではありません。たとえば食物性抗原である小麦粉を吸い込んで喘息をおこしたり、卵や牛乳が皮膚に付いて蕁麻疹をおこしますし、ソバ粉を吸い込んでも食べてもアレルギー反応をおこすことがあります。すなわち食物性抗原は必ずしも食物性抗原になるとは限らず、吸入性抗原や接触性抗原になることもあります。
 抗原にはある程度共通した性質があります。 1.分子量が1万から10万である。2.加熱や酵素作用に対して比較的安定であることです。卵は加熱処理によって比較的抗原性(アレルギー反応を起こす力)を失い易い蛋白ですが、それでも卵蛋白のオボムコイドや牛乳のベータ・ラクトグロブリンは加熱に対して安定で、油断できません。このような場合、動物性蛋白質が不可欠な乳児には分子量の小さなペプチドミルクを奨めることもあります。
* 金やクロム、ニッケルなどの金属アクセサリー、うるしの成分のウルシオール、化粧品に含まれるラノリン、防腐剤に用いられるパラベン、さくら草〔プリムラ〕成分のプリミンなどは分子量が1000以下であるため、表皮内に簡単に侵入して来ます。但しこれら分子量の小さい物質は単独では抗原とはなり得ず、表皮細胞の細胞膜蛋白と結合することによって細胞膜の構造を変え、表皮内のランゲルハンス細胞に抗原と見なされて、4型、あるいは2型アレルギー反応をおこします。このように分子量が小さくて単独では抗原となり得ないが、組織の蛋白と結合して抗原となるものをハプテンといいます。ハプテンはアレルギーの最初のページで説明したアトピー皮膚(皮膚の乾燥)のようにアトピー性皮膚炎の引き金となり得ます。
* 交差抗原性という問題があります。交差抗原性とは例えば米、小麦、トウモロコシ、アワ、ヒエの蛋白の間には一部共通の抗原があることをいいます。即ち米に対してアレルギーの人は小麦は言うに及ばず、トウモロコシ、アワ、ヒエに対してもアレルギー反応をおこす可能性があることを意味します。同様の関係はギンナン、マンゴー、ウルシなどの間や、シラカバ花粉、ナッツ、リンゴ、西洋なし、モモ、アーモンド、ニンジン、トマトなどの間、また天然ゴム(ラテックス、最近問題になっています。)、ババナ、アボガドの間にもそれぞれ認められます。
特異的IgE抗体とはある抗原のみと結合するIgE抗体です。これを放射性同位元素を用いて検出する方法をRASTと云い、1型アレルギー反応の検査です。これだけでアレルギー反応をおこす抗原とは断定できませんが、有力な検査です。アレルギーの血液検査とは普通、RASTを指します。右図はアレルギー疾患の患者さんの血清特異的IgE抗体の年令的推移を示します。乳幼児期には卵白や牛乳に対する特異的IgE抗体の陽性率が高く、2才以降減少します。その後大豆、米、小麦が増えていきます。アトピー性皮膚炎は卵白や牛乳特異的IgE抗体の陽性率が高い1〜2才に多く、気管支喘息はダニ、花粉、動物のフケに対する特異的IgE抗体陽性率が上昇する幼児期以降に多くなっていきます。

次に食物性抗原の説明をします。


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