1.乳幼児期に多いアトピー性皮膚炎


アトピー性皮膚炎には2つの共通項目があります

1)皮膚の乾燥    

健康な皮膚には皮脂腺から分泌される皮脂が皮膚表面を被い(皮脂膜)、最外層の角質層の細胞にはアミノ酸や尿素から成る自然保湿因子と呼ばれる物質が含まれています。さらに角質細胞はセラミドとよばれる角質細胞間脂質でつなぎとめられ、体内の水分を保持し、外部からの刺激物の侵入を防いでいます=皮膚のバリア機能。

 皮脂分泌は性ホルモンに左右されます。新生児は母親由来の性ホルモンの影響で、思春期の学童は自分が分泌する性ホルモンの影響でニキビができるほど皮膚が脂っぽくなり、乾燥することはありません。しかし、生後数か月くらいから思春期までと中高年以降は性ホルモンの分泌が減るため、皮脂膜による皮膚保護作用が弱くなり、皮膚が乾燥しやすくなります。

 しかし、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚のバリア機能を維持する最大の担い手はむしろ水と結合した脂(あぶら)であるセラミドです。セラミドは外部からの刺激物の侵入を防ぐだけではなく、真皮からの水分の過剰な放出を防いで皮膚を乾燥から守り、うるおいのある皮膚を維持しています。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは健常な部分でも皮膚に含まれるセラミドの量が少ないことが分かってきました。セラミドの量が少ないと角質細胞間に隙間ができ、外部からの刺激をうけやすく皮膚から水分が失われ、皮膚がカサついてきます。(上図)

 右の写真のアトピー性皮膚炎の乳児の皮膚は病変がない部位でもカサカサ乾燥し、しっとりした感じがありません。このような乾燥した皮膚では皮膚のバリア機能が低下し、細菌やホコリ、ダニの成分(体の一部や尿、糞塊)などの刺激物が侵入しやすい状態で、ドライスキンと呼ばれます。
 したがってアトピー性皮膚炎の治療の第一歩は皮膚のバリア機能を維持すること、すなわちスキンケアです。けれども、ドライスキンによって皮膚の炎症である湿疹が発症はしても、これは単なる湿疹(たとえば乳児湿疹)であって、アトピー性皮膚炎とは云いません。

2)アレルギー反応

 皮膚に侵入した外来の刺激物は、表皮や真皮の免疫機構の見張り番であるランゲルハンス細胞とも呼ばれるマクロファージやリンパ球に異物と認識され、アレルギーの素質のある人は、体を守る免疫反応が逆に体を攻撃するアレルギー反応をおこします。乳幼児では未熟な消化管から取り込まれた食物が原因となることが多く、大部分のアトピー性皮膚炎は消化管が強くなる2、3才頃に自然治癒します。
 アレルギー反応には4つのタイプがあり、アトピー性皮膚炎では1型と4型とがそれぞれ別々に、あるいは同時にアレルギー反応をおこしています。

 
もうひとつの大事な治療はアレルギー反応に対する治療です。


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